帰って来たコウノトリ
読売新聞朝刊(2011/3/6)から
帰ってきたコウノトリ
農法に工夫「里の鳥」舞う
白と黒の美しい翼を広げた国の特別天然記念物「コウノトリ」が、
兵庫県豊岡市の空に舞う。県と市の野生復帰計画で2005年
から放った人工繁殖の27羽は、42羽に増えた。(略)
豊岡市は、地域の農家と協力して「コウノトリを育む農法」を勧めた。
① 一度抜いた水を収穫後の田に張る「冬季たんと水」と、田植えの
1ヶ月前に早めに水を入れる「早期たん水」
② あとで稲刈りがしやすいように土固めのために一度水を抜く「中
干し」の実施を、従来の6月から7月上旬に送らせる。
③ 無農薬低農薬――などがこの農法の特徴だ。
水田に生物が戻って来た。
兵庫県立農林水産技術総合センターの昨年7月の調査では、水田の土
500ミリリットルにイトミミズ66~75匹もいた。ふつうは1匹
ほどだ。トノサマガエルも2~3倍に。「虫干し」を遅らせたので、
オタマジャクシが干しあがらずにすむ。水田と用水路をつなぐ緩やか
な「魚道」も、100か所以上設置した。イトミミズを食べるトジョウ
や小魚などがその魚道をのぼって、田に住みついた。
(略)
豊岡発のコウノトリは全国27府県に飛来している。かれらがふたたび
「里の鳥」になれるのか。それは宅地開発や農業の断念で失われた里山
を取り戻せるかということなのだ。(安田幸一)
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