読売新聞朝刊(2011/12/24)から
消費税・一体改革の行方
ソフト開発者を目指す千葉県の高校2年生、渡辺祥太郎さん(17歳)
は、4日、ブログラミングを教えている福岡県の高校生らに自作の
「借金時計」を見せた。
スマートフォン「iPhone(アイフォーン)」の画面では、1秒間に
約117円のペースで国と地方の借金が増え続け、数字は900兆円に
迫る。
「こんなにたくさんあるのか」「私たちがつくった借金でもないのに」
と、怒りに満ちた声が相次いだ。1人りあたり700万円に近い。
昨年5月、無料アプリとして開発し、ダウンロードは2万5000件に
達した。渡辺さんは「国家運営に影響するのであれば、増税も必要だと
思うと話す。
英エコノミスト誌は11月、日本経済の記事に、満開の桜の木の下で
初老の夫婦がほほ笑む写真を添えた。実に幸せそうな光景だが、
「誰の10年が失われたのか」
と題した記事の内容は厳しい。
1990年以降、高齢化に伴って年金や医療などの社会保障支出は増えた
のに税収は減っていると指摘し、
「日本経済は若者よりも中高年世代のために機能している」
と分析した。
「世代間対立をあおるべきではない。高齢者がもらっている年金が
高すぎるということはない」
政府と市民グループが15日に都内で開いたシンポジウムで、政府・
与党社会保障改革本部の峰崎直樹事務局長は、年金制度を保つには
負担を増やすしかないと訴えた。
今は、現役世代約3人で65歳以上の高齢者1人を支える「騎馬戦型」
だが、2050年以降は1人が1人を支える「肩車」に――。
野田首相は、社会保障の給付と負担の関係をこう訴える。
内閣府経済社会総合研究所の研究員がまとめた試算によると、これから
生まれて来る「将来世代」は、生涯の負担が受益を7283万円上回る。
85歳は逆に375万円多い。試算をまとめた増島稔景気統計部長は、
「将来世代に負担を先送りする構図が続けば、社会保障制度はたち
ゆかなくなる」
と指摘する。
ハンガリー政府は今春公表した憲法草案で、
「子どもを持つ女性に追加的に1票を与える」
という大胆な提案を盛り込んだ。現代の民主主義の大原則である
「1人1票」のルールの見直しを迫るものだ。採用は見送られた
ものの、アイデアに理解を示す声は少なくない。
一橋大学の青木玲子教授は「世代間の分配の当事者である政策決定に
子どもが政策決定に参加していない」と述べ、少子高齢化が進む日本に
こそ、ハンガリーで議論された仕組作りが必要だと訴える。
子どもがいる人いない人の考え方の違いを調べるため、アルケ―トを
準備中だ。
将来世代への負担をいかに食い止めるか。先進各国で共通する課題だ。