田から物　宮崎米穀店

「子や孫のために」

７０年代の東の新空港反対運動の三里塚闘争は有名ですが、
もう一つ、西に、国の交通行政を“震撼”させた幹線道路建設に
反対する道路公害反対運動がここ尼崎でありました。

沿線住民が、自分たちでとことん話し合って、その自らの智恵と
団結力で、時には工事現場への「座り込み」という【実力阻止】
をも辞さず、
行政との“論争”においてでも、公害の実態を
〔写真〕〔生き物調査〕〔騒音調査〕〔振動調査〕〔大気汚染調査〕と
それらを〔映画〕にしたりという形で、これらも自らで調査をして
学び、行政側の論理や理論には住民側の論理や理論で
対抗していったのです。

「座り込み」は６，７年にも及び、裁判闘争にも訴えて出て
国から引き出した公害対策は、
自動車の排ガス規制、車線減少、沿線に緑地帯の設置、
防音版やトンネル化、沿線家屋の防音工事・冷暖房機の設置、
大型車の夜間に中央寄りに走る規制、車のスピード規制、
大型車を迂回させる割引制度などを「勝ち取った」。

全国に「尼崎に道路公害問題あり」と名を馳せたのです。
そのスローガンは
『住民無視の高速道路建設絶対反対』
『４３号線から一切の公害を無くせ』

道路公団「・・お宅らは全国に“名を売った”はるし・・」
と言わしめた、その名は「４３号線公害対策尼崎連合会」。

その戦いの形態は、
一、 各地域地域で「地区集会」を持って住民の考え、希望を
十分に反映をさせる。
二、「全体集会」で各地区の報告を受けて、討議をして全体
としての意見を集約する。
三、 それを各地区に持ち帰り「地区集会」で再度意思統一を
する。
四、 代表及び事務局長は「決定権を持たない」。すべて会議で
決められたことが『会の意志』になる。
※公団「お宅らとは誰と話をしたらよいのか分からん・・」
五、 そのことは「４３尼崎連合会ニュース」として、ただちに
沿線住民宅に配布をされる。
六、 阪神高速道路公団のある地区での『工事説明会』の様子は
たちまちの内に沿線住民の知るところとなり、次の地区での
『説明会』はさながら「公団を追求する場と化す」といった具合。
七、 各党派との関係は、「応援はお受けするが、会が党を応援する
ことはしない」
八、 応援や協力をしてくださる方は拒まず、運動を利用する方には
「遠慮していただく」

その民主主義的形態の闘争は、各地で次々と高速道路反対の烽火
（のろし）が上がっていくことになり、その運動は広がりを見せ、
全国集会を形成するまでに発展した。
公団「お宅らの“お陰で”地図に線を引くだけで反対運動が起きる・・」
「尼崎で強行に事を進めたら成田のように全国闘争になりかねない・・」

ここ尼崎では大気汚染の公害運動もあったので「子や孫のため」
「地域のため」にと、若者から高齢者まで、幅広い年齢層を結集しての
果敢な戦いになっていったのだろう。