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古記事・こしひかり物語

日本経済新聞から
コメの人気品種コシヒカリを育てた石墨慶一郎氏のことを書いたら、読者から
お手紙をいただいた。石墨氏は確かに功労者だがまだ〔越南十七号〕と呼ばれ
ていた新品種の品質に着目し、いち早く奨励品種にした新潟県農業試験場長
(当時)杉谷文之の功績も忘れないでほしいという趣旨だ。

福井県で石墨慶一郎氏が育成した〔越南十七号〕は千九五十三(昭和二十八)年
から新潟など各県で試験栽培された。元をたどれば戦争中に新潟県で交配された
ものだから、新潟県にとっては言わば里帰りだった。倒れやすいという欠点は
あったが、新潟県農業試験場長(当時)杉谷文之氏は栽培技術で克服できると
みて、五十六年から奨励品種に採用し、コシヒカリと名付けた。
五十六年といえば、前年は豊作だったものの、まだ飢えの記憶が消えていない
ころだ。なによりも安定多収が第一とされた時代に、コシヒカリの味を評価した
先見の明には敬服するほかない。コシヒカリとは「越の国に光り輝くコメ」と
いう意味だ。杉谷氏の目に狂いはなく、コシヒカリは越の国どころか日本を代表
するコメになった。

コシヒカリは交配から命名するまでに十二年かかった。一つの新品種が世に出る
までには、たくさんの技術者たちが汗を流している。栄光を勝ちえた品種の陰で、
無数の「新品種の卵」が日の目を見ないまま消えていった。そうした努力、明暗
の積み重ねの上に、私たちの食の豊かさがある。




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Posted by 田から物 宮崎米穀店  at 08:03 │Comments(0)健康

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